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子育て

「家事や子育ては、女性が行った方がよい」と本心ではそう思うアナタへ ~ A君の一輪の赤い花 ~

結婚に関する正確な情報をデータ小噺でお届けすることで、明日からの皆さんの行動が「そうか、よし!」と変わる、そんなコラムを担当させて頂くニッセイ基礎研究所生活研究部の研究者、天野馨南子です。

このキャンペーンでの最終回コラムは、あるデータとそれにまつわる私の想い出でしめくくりたいと思います。

【育児休業をとるお父さんは100人に・・・3人!】

「イクメン」という言葉、本当によく目にしたり耳にしたりするようになりました。

「男性の育児参加」などというカタイ言葉ではなく、キャッチーな言葉として巷に溢れています。ところが、それとは裏腹に日本の男性の育児休業取得率は依然として「超」がつくほど低い状況が続いています。

過去最高値を示しました、と発表された2016年の取得率で3.2%。

100人のお父さんがいたら、わずか3人です。

誰も取っていない、といってもいいほどのちょっと驚くべき低数値です。一方、女性の方は常に取得率が8割を超えています。

どうしてこのようなことが起こるのでしょうか。勿論、男性より女性の方が長時間働いているから、一般事務など女性の多い職種の方が融通利くから、つまりは、働き方改革・雇用機会均等問題でしょう、という視点も勿論間違いではありません。

しかし、本当にそれだけでしょうか?

様々な子育て支援策が叫ばれてきたにも関わらず、特に男性の育児休業取得率があまりにも低い水準で低迷を続けていることがデータからは見て取れます。

制度や環境の問題も確かにあるけれど、私たちの意識の中に「やっぱり家のことや子どものことは女性の方がより適性があるのでは?いや、あるでしょ!」という価値観が根強くある、ということはないのでしょうか。

【島根県・鳥取県における、家事や子育てへの男女の役割価値観】

それでは、実際の意識調査の結果を見てみましょう。

下は2015年に国が実施した2万人を超える大規模な意識調査の結果をもとにした分析結果です。

「家事や子育ては女性が行った方がよい」という質問に、「そう思う」「ややそう思う」と回答した「肯定派」男女の割合を計算してみました。

データからは結局男女とも、その半数の方が「本当は家事も子育ても、女性が向いているけれどね」と思っていることがわかります。島根県の女性に関しては、全国平均を超える割合の女性が「女性の方が向いている」と思っていることもデータからはわかります。

男女それぞれ半分くらいの方が「男性が家事や子育てをするにしても、補助的でいいよね」と考えているとみてよい、そんな結果です。

男女の家庭における役割分担はダイバーシティの観点から見るならば、どういった比率がいいのか、ということはここではあえて触れません。

男女が同じ目線で向き合った話し合いの結果に基づく分担であれば、どんな分担でも構いません。どちらかが仕方なく、または不満やモヤモヤ感を持ちつつやっている、でなければそれでいいのです。

しかし、家庭での役割分担についてパートナーと向き合う際の2人のそれぞれの瞳以外にもう一つ、

「第3の瞳」

があることを忘れてはいないでしょうか。

お父さん、お母さんを見つめる、子どもの小さな瞳の存在を。

 

【A君のさしだした、1輪の赤い花】

桜舞い散る季節になると必ず、夫婦そろって思い出す、ある想い出があります。

もう5年も前の話になります。わが家は共働き家庭のため、娘は保育園に通っていました。通っていた保育園は公立保育園だったため、シングルマザー、生活保護の方、障がい児童への入園優先枠がありました。

A君のママはシングルマザーでした。若くてとても元気なママでした。

A君はとてもやんちゃで、保育園に迎えにきたママはいつも私たちに「うちの子の被害者の会ができていませんか?」とひたすら頭を下げていました。

A君は特に男の子との喧嘩が凄かったようです。うちは娘のため、むしろA君は近所のスーパーで出会ってもとても優しく、素直ないい子にしかみえませんでした。ママの平謝りの姿に不思議な感覚をもったものです。

実はA君には同じ保育園に通うお兄ちゃんがいました。発達障がいがあり、家でA君にどうしても乱暴してしまうのです。お母さんは働いているので、目をかけても当然忙しいですし、お兄ちゃんのケアの方により手がかかります。

A君が保育園で男の子に対してだけやんちゃだった理由。

日常として家でお兄ちゃんとの間に抱えていたつらさ、そして大人目線で見ればいたしかたない話ではあったのですが「どうしてもお兄ちゃん優先になってしまう日常」、そんなところにあったのかもしれません。A君にとって「男性」はあまりいい印象がなかったのかもしれないと今更ながら思います。

保育園最後の年長クラスの年。

その年のA君は不思議なくらい、とても落ち着いていました。A君以外のやんちゃ魔人がクラスに登場して依然としてにぎやかなクラスでしたが、A君は本当に静かで穏やかな子になっていました。

入園からずっとママかおばあちゃんがA君を送迎していたのですが、その頃、保育園に娘を迎えに行った夫が、

「どうも親戚らしき若い男性がお迎えに来ているよ」といいだしました。

「あら、よかったね。少しでもA君ママが楽になれるだろうから」

そういって私は喜びました。

そして卒園式。その日は満開の桜が卒園生を思い切り祝福してくれていました。いつもの通遠路や園庭に桜の花びらが舞い散る、本当に美しい日でした。

保育園からはこんな説明がありました。

「保護者さんは前列に座ってください。園児が卒園証をもらったあと、先生からお花を1輪もらいます。そして、親御さんを呼びますので、そうしたら立ち上がってお子さんからお花を受け取り、手をつないで一緒にホールの花道を退場してくださいね」

卒園証の手交が始まりました。

お花をもらった園児たちが、「お母さん!」「ママ!」「かあちゃん!」と、次々と大声でママを元気いっぱい呼びます。

呼ばれたママたちはいそいそと立ち上がると、お花を受け取り、手をつなぎ、嬉しそうに子どもと立ち去っていきます。最前列には20人以上のママが並んで座り、その後ろにビデオカメラやカメラをもったパパたちが立っていました。

そして、後半。A君の番になりました。

A君は卒園証と1輪の真っ赤なお花を園長先生から受け取りました。

A君のママが手にしていたバッグを席に置き、立ち上がろうとしたその瞬間。

 

「お父ちゃん!!!!!」

 

A君が渾身の限り、大きな声で叫びました。

ホール内がしんと静まり返りました。

A君ママはびっくりした顔で慌てて席の後ろに立っていた若い男性を見上げました。会場からどっと笑い声があがるのと同時に、すすり泣きが聞こえたのを覚えています。

男性は一瞬おどろいたように固まりましたが、ママに急いでビデオカメラを渡し、花道を足早に前に進みました。

A君は、小さな手に握りしめた赤いお花を、その「お父ちゃん」に差し出しました。

赤い花を片手に、もう片手にはA君の手をしっかりと握って、男性は退場して行きました。

小さな背中と、若い新米パパの背中に、私は涙が止まりませんでした。

私たち夫婦はA君の姓が(その背景はわかりませんが)入園時と同じだったこともあり、A君が年長組になってから手をつないで一緒に帰宅していたあの若い男性が、他でもないA君の新しいお父さんだと全く気づいていませんでした。

いつもA君を迎えにきていた、物静かで控えめで優しそうな若い男性。今までのA君の中にあった「乱暴な男性像」をすっかり上書きしてくれた、素敵なお父さん。

年長の時にA君の様子がすっかり変わった理由が、あまりにもはっきりとわかった瞬間でした。A君にとって、男性はもはや攻撃対象ではなくなっていたのです。

その時の「気づき」による打ちのめされるような衝撃は今でも忘れられません。

私の心に鮮烈に刻まれた、小さな少年の渾身の叫びでした。

A君、卒園、本当に、本当に、おめでとう。

そのお花、どうしても、君の待ち望んでいた《誰よりも僕に沢山の愛情を注いでくれる》その人に渡したかったんだね。

どうか、笑顔の小学校生活を過ごしてね、と、涙が止まらなかったのを覚えています。

「本当は家事も子育ても、女性が向いているけれどね」と思っている皆さんへ。

子どもの心は真っ白なキャンバスです。それがママ(女性)だから、パパ(男性)だから、血のつながった人だから、なつくわけではありません。

小さな第3の瞳はただただ、自分に向けられる「オリジナルの愛情の居場所」を探し求めているだけなのです。

幼い子どもへの「大人からの愛情のかけ方」が多様であるように、

子どもの「大人への愛情の期待や希望の形」も多様なのです。

どうか、あなたのそばに舞い降りる天使たちの気持ちに、男性だから、女性だから、実の親だから、など関係なく、もっと多様に、よりそってあげてください。

最後に、A君、沢山の気づきを、ありがとう。

天野 馨南子
このコラムを書いた人

天野 馨南子

株式会社ニッセイ基礎研究所 生活研究部アナリスト 東京大学経済学部卒。
日本証券アナリスト協会検定会員。

1995年日本生命保険相互会社入社、1999年から同社シンクタンクに出向。
専門分野は少子化対策・女性活躍推進。

厚生労働省育児休業法関連調査等を経て結婚・出産。1児の母。

学際的かつデータに基づく研究をモットーとし、くらしに必要な「正確な知識」を広めるための執筆・講演活動の傍ら、
内閣府少子化対策関連有識者委員、地方自治体・法人会等の少子化対策・結婚支援データ活用アドバイザー等を務める。

㈱ニッセイ基礎研究所
http://www.nli-research.co.jp/

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