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結婚

夫婦喧嘩に面取り

ビビられるかもしれないが、口喧嘩なら負ける気がしないとしばらく思っていた。一番不必要でこれから出番は無いであろう強さだとわかったのはここ2〜3年。これが大人になるってこと、親になるってこと、そして夫婦になるってことなのか。

結婚というのは、“粉もんとご飯を一緒に”はアリか、はたまた人類は猿から進化したと信じるか信じないかなど、全く違う環境で育った二人が一緒に生きること。その違いこそが楽しいのであり、しかし同時にストレスを生む。ある精神科医らが作成した、ライフイベントにおけるストレスを点数付けしたリスト*があるが、結婚のストレスを50点の基準としたこのリストでは配偶者の死が83点でトップ。これに対して住宅ローンは47点、軽度の法律違反は41点で結婚の方が高く位置付けられている。結婚という幸せな出来事でも少なからず精神的な負荷がかかっているものと考えると、とても納得した。というわけで、喧嘩というイベントは我が家でも開催される。

御多分に洩れず大したことじゃ無いきっかけでそれは始まる。今書こうとしても思い出せないほどだ。ちょっとした物の言い方や態度が引き金になることがほとんどなのだが、本当は忙しかったり疲れていたりして余裕がないのが原因であることが多い。二人とも大声をあげたりはしないが、以前の私なら相手が言い返せなくなるまでロジックとボキャブラリーで攻めていくというのがパターンだった。負けない。つまり喧嘩に勝つのである。ところが夫と付き合い始めて初めて喧嘩をした時、彼に言われていろんなことが変わった一言がある。

「僕たちはチーム。目的は二人がより良くなること。」

当たり前すぎて気づかなかったその概念。チーム内で攻撃しあってその勝負に勝ったところで、二人の関係が良くなるわけではない。言い負かした方はその場でだけ気が済み、相手には鬱憤が残る。本当にそれだけだ。二人にとってなんと意味のない時間とエネルギーか。

それ以来、(時々それでも勝ちに行こうとする自分を諌めつつ)私たち夫婦の喧嘩は形を変えた。夫はどうしているか知らないが、私は不満があってもすぐには夫に伝えなくなった。暫くの間自分の中で状況を解剖してみることにしたのだ。

例えば夫がある休日の朝からイライラしている。それでも黙って食器を洗ってくれたりはするが、いつものようにオナラをした後にこっちを見てリアクションを待つ(これには飽きたので応えないことにしている)といったノリもなく口数が少ない。重たい空気が部屋を包む。そして私もただイライラして見せる夫にイライラして敢えて声をかけないという一見どうしようもない負のスパイラル。

ここで私がまずすることは、感情を切り離して状況の観察。「私は1歳になる息子のお世話でてんてこまい」「夫の仕事は立て込んでいる」「家事はそれでもやってくれる」など。続いて感情を冷静に見つめる。「私のイライラは何に対してなのか」「彼の態度だけか」「自分の時間がないことも関係している」「家事に手が回っていない背徳感もありそうだ」など。続いてどうしたいのか。「何が問題なのか知りたい」「大変だけど頑張ってるねと一言労われたい」など。最後に要求の仕方を考える。「何が嫌なの?」と聞くか「忙しい中家事を手伝ってくれて助かってる。あなたはどうして欲しい?」と聞くかなど。

その中で、忙しい中家事の一部を負担してくれたことに対する私の感謝の表現が足りていなかったことに気づいた。そこで「忙しいのに食器を洗ったり洗濯物を畳んだりしてくれたおかげで録画してあった縄文時代の番組が観られるよ。ありがとう。」と伝える。すると「お前も24時間休みなしで息子のお世話をして大変だよな。甘いもんでも食べながら一緒に古代へタイムスリップしようか。」と言ってくれて、仲良くテレビの前に座ることになる。

この工程を踏むと、最後の要求に相手をさげすんだり存在そのものを否定するような表現や感情は入る余地がない。あくまで問題解決と関係の改善のためのワンステップになる。そして重要なのはそこに勝敗などなく、ゴールは合意であること。時にはこの過程で自分の過ちや愚かさに気づくこともある。それら全部に向き合うことで、芯がありながらパートナーのためにしなやかでいられる自分を築いていけるような気がしている。

ちなみにあとで知ったことだが、このやり方には「非暴力コミュニケーション」という名前が付いているらしく、夫婦間だけでなく友人や職場でのトラブルにも使えるものだったのでこれを読んでいるあなたの人間関係にも役立つかもしれない。

夫婦である以上喧嘩は大なり小なり避けられないと思っているが、激しい夫婦喧嘩を子供に見せるとその子の脳に悪影響を与えるという研究結果もあるので、そのやり方には工夫が必要だ。煮物に例えると火から下ろして味が染み始めた辺りの私たち夫婦。ぶつかり合って傷ついて煮崩れるより、面取りという前もって角を切り取る対策を知っておいた方が仲良く美味しくなっていけるはずだ。

*夏目誠・村田弘(1993)ライフイベント法とストレス度測定(ストレスと健康<特集>)公衆衛生研究,42(3),p402-412

奈羅尾 玲子
このコラムを書いた人

奈羅尾 玲子

鳥取県若桜町出身。特殊メイク・特殊造形を学ぶため高校卒業後に渡米。The Art Institute of Pittsburghで学士号を取得後、ピッツバーグを拠点に映画、舞台、ハロウィンなどの現場で経験を積む。帰国後、日本海テレビの情報番組「スパイス!!」(毎週土曜あさ9:25〜)でリポーターとして起用されたのをきっかけにタレントのキャリアをスタート。

現在は「金曜スパイス!!」(日本海テレビ 毎週金曜ごご3:50〜)と「スパイス!!」でメインMCを務めるほか、ナレーション、CM、イベントMCなど山陰を中心に活動している。

2014年に結婚、2017年2月に第1子となる男の子を出産。目下の興味は古代史、民族学、考古学、文化人類学などを通してみる人間の普遍的な思考や信仰。自宅のセルフリノベーションにもゆっくりのんびり取り組んでいる。

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